財前法律事務所

愛知県・安城市の弁護士です。
「街弁(マチベン)」として、普通の市民の皆様が遭遇してしまう法律問題に取り組んでいます。
存在は身近、仕事は高品質がモットーです。

記事一覧(22)

中学生の職場体験のお手伝いをしました

弁護士会での取組みの一環として行っている、中学校の生徒さんたちの職場体験学習の引率・サポートを担当しました。私は、今回、豊田市の中学校の生徒さんを担当させていただきました。法律業界にちょっと興味があるというお子さんもいれば、明確に法曹を志しているお子さんもおり、私も気合いを入れてお話しさせていただきました。『職場体験』なので、本当は弁護士に同行して、実際の法律相談や書類作成、裁判所での期日などを見てもらえるとよいのですが、守秘義務があるので、なかなかそうはいきません。どうしても、愛知県弁護士会の西三河支部会館で弁護士が中学生にお話しするというのが中心となってしまいます。ですが、できるだけ実際の仕事内容を体感していただこうと、今回、自分のスケジュールをベースにして、架空のある1週間の弁護士のタイムスケジュール表を作り、お話ししました。弁護士というと、ドラマなどでは法廷での活動が描かれがちですが、意外と書面を作る時間が多いであるとか、色んな仕事をしているであるとか、皆さんの思っていたスケジュールとはだいぶ違ったようです。また、裁判所のご厚意で、法廷見学や裁判官への質問の機会も設けていただけました。法廷では、裁判官・裁判員席や被告人席などにも座らせていただけました。それぞれの席で見える景色が全く違うのを実感いただけたのではないかと思います。私からは、「壇上に座っている裁判官と同じ目線で話すために、弁護士が法廷で発言するときは立って話せと指導された」というプチ情報もお話ししました。裁判官には、事前に生徒さん達が用意した質問に沢山答えていただきました。普段、裁判官から「どうして裁判官になったのか」など個人的なお話を聞く機会はないので、私にとっても非常に興味深く、刺激になりました。職場体験で担当した生徒さんと十数年後、弁護士として共に働ける日を心待ちにしています。

SNS詐欺被害回復ビジネスの闇――“弁護士”を名乗る者による二次被害にご注意を

ロマンス詐欺や投資詐欺、副業詐欺、情報商材詐欺など、SNSを通じた詐欺が横行しているのは皆様ご存じだと思います。これらは、残念ながら、相手方を特定するのが難しく、仮に特定できてもお金を隠されるなどして被害回復が難しい分野の一つです。ところが、今度は「被害回復」をうたった弁護士による二次被害ともいうべき着手金トラブルが問題になっています。2025年5月14日放送のNHK・クローズアップ現代では、SNS型投資詐欺の被害に遭った方々が、弁護士に高額な着手金(*)を支払ったにもかかわらず、「連絡が取れない」「何の進展もない」という深刻な二次被害にさらされている実態が紹介されました。そして、番組では、そのような「着手金ビジネス」の裏には、弁護士への信用を利用して多額の利益を得ようとする広告会社の存在が明らかにされました。⇒ NHKのウェブ記事はこちらこうしたビジネスは、弁護士という職業そのものの信頼を深く傷つけるものです。弁護士への信頼を失墜させる許しがたい行為 実は、国際ロマンス詐欺の回復を謳う弁護士がどうも怪しいという話は、数年前から消費者弁護士界隈で挙がっていました。膨大な件数を扱っているのに弁護士が少数しかいない、違う弁護士のホームページなのに同じ作りをしている…。どうも裏で何かの業者が手を引いているのではないか。しかし、なかなか確証を取ることができず、実態解明までに時間がかかってしまいました。 この間、私は、「こういう弁護士がいるが依頼してもよいか」とのご相談には、怪しいからやめた方がよいとアドバイスしてきました。しかし、私たちが手をこまねいている間に被害が広がってしまったかと思うと、とても悔しく、申し訳ない気持ちで一杯です。私は、弁護士が提供する「商品」の一つは信頼だと思っています。社会で弁護士資格に何か力があるとすれば、それは、法的知識や技術はもちろん、一人一人の弁護士が目の前の案件に真摯に、誠実に向き合って積み重ねた信頼の賜物だと思います。信頼は、築くのには時間がかかりますが、崩れるのは一瞬です。ごく少数の者による弁護士資格に対する信頼を裏切る行為は、全ての弁護士に対する不信感を生んでしまいます。日々、私たちはこつこつと真面目に仕事をしているのに、なんてことしてくれるんだというのが正直なところです(あくまでも私個人の感想です)。債務整理分野でも、同様の“誤認商法”がまかり通っているこの問題は、SNSによる詐欺に限った話ではありません。債務整理分野においても、不適切な広告が問題となっています。たとえば――- 「着手金0円」と謳いながら、実際には「管理料」「手数料」などの名目で報酬を徴収する- 「全国対応」としながら、出張体制や弁護士関与の実態が乏しい- 「借金減額シミュレーター」や「借金0円の可能性」と表示し、どんな入力でも良い結果が出る仕組みで誘導する- 「国が認めた借金救済制度」など、あたかも特別な優遇制度があるかのように誤認させる表現を用いるこれらは、日本弁護士連合会の業務広告指針に反し、誤認・誇大広告に該当するおそれがあります(参考:https://niben.jp/news/ippan/2025/202503104437.html)。 私の経験では、当初から破産やむなしという方について、大手事務所が任意整理で受任して実現不可能な和解案を締結し、結局支払えなくなって地元の弊所へ破産のご依頼にいらっしゃったという案件が複数ありました。もちろん、ご本人の強い意向で任意整理を選択したという場合もありましょうが、結局、当初から破産申立をご依頼された場合と比べ、任意整理分の弁護士費用が余計にかかってしまうことになります。 「会えずの弁護士」問題――信頼できる弁護士の選び方 よく、「どうやってよい弁護士を選んでよいか分からない」との声を耳にします。また、「○○に強い弁護士を探している」というご質問もいただきます。法的トラブルの解決において、誰に頼むかは大切な問題です。ネット上の広告文句や派手なホームページ、見せかけの費用の安さだけで選ぶのは、非常に危険です。そもそも「○○に強い」というのは、専門性の客観性が担保されない場合、弁護士の広告規制上使ってはならない表現とされています。弁護士の能力というのは、その分野の専門知識や取扱い件数だけでは測れません。依頼者からヒアリングする能力、事実から法的構成をする能力、裁判所や相手方へ分かりやすい伝わる文章を書く能力、依頼者への共感力と感情に流されず判断するプロ意識、その方との相性などなど、たくさんの評価軸があると思います。- 「本当にその弁護士と会えるのか?」- 「誰が自分の事件を担当するのか分かるのか?」- 「事務的な処理だけで終わってしまわないか?」こうした不安を抱かないためには、必要なときにリアルで会える、顔の見える弁護士に依頼すべきです。迷ったら、地元の信頼できる弁護士へ大切なお金や生活がかかった法的トラブル。安易な「回復ビジネス」や「無料・全国対応」の甘言に惑わされることなく、誠実に対応する地元の弁護士にご相談ください。顔が見える、必要があるときはリアルに会える弁護士こそが、信頼でき確実なパートナーだと、私は思います。(*参考)NHK記事の補足説明記事では、8%という着手金の設定自体が高額だというようにも読めます。しかし、経済的利益(≒被害額)300万円以下の場合は、旧日弁連基準でも着手金は8%とされています。8%というパーセンテージが問題ではなく、被害額の大小にかかわらず一律8%としている点が問題だと考えます。タグ(検索向け)#詐欺被害  #SNS詐欺  #ロマンス詐欺 #投資詐欺 #弁護士の選び方  #業務広告指針  #債務整理広告  #非弁

家庭裁判所は愛のある裁判所?

日本初の女性法曹のうちの一人をモデルにしたNHKの朝ドラ『虎に翼』。同じ女性法曹の先輩の物語としても興味深く観ています。法律家に限らず女性なら(男性も?)「あるある!」ということが満載で、その点でも好感が持てるドラマです。さて、先週の放送では、主人公の寅ちゃんこと寅子が家庭裁判所の設立に奔走していました。その中で、滝藤賢一さん演じる多岐川が、アメリカのファミリーコートを見てこのような裁判所にしたいと思った、必要なのは愛のある裁判所だというようなことを言っていました。何でも、多岐川が見たファミリーコートには、観葉植物が置かれ、絵画が飾られ、温かい雰囲気の中で審理が行われており、それを日本で新しく設立する家庭裁判所にも導入したいのだとか。・・・・・・言われてみれば、家裁に、ある!!観葉植物と絵画が!!何気なく見ていたものに、そんな深い意味があったなんて。今では公の機関に観葉植物が置かれ絵画が飾られていることは珍しくなく、正直、それで癒やされるということはないのかもしれません。まして、岡崎の裁判所は地方裁判所と家庭裁判所が同じ建物に入っており、家庭裁判所がある2階だけが特に温かな雰囲気というわけでもない気がします。地高裁と家裁が別の建物である本庁ならともかく、支部はどこも同じようなものではないでしょうか。調停の待合室に観葉植物が置かれ、子ども向けの本が置かれているのは覚えていますが、後はどうだったかな・・・。さすがに法廷の中よりは調停室や待合室の方が柔らかい雰囲気だと私は思いますが、裁判所に初めて来る人からすれば、どちらも緊張感ある場所であることに変わりないのかもしれません。ドラマの中で、多岐川さんは、食糧管理法を守って餓死した裁判官に触れ、「法律は人が幸せになるためにある」とも言っていました。普段、私が弁護士として仕事をしていく中では、相談者や依頼者の方に「お気持ちは分かりますが法律や実務ではこうならざるを得ない」と言わねばならない場面がたくさんあります。それでも、戦後に新憲法下で家庭裁判所を設立した多岐川さんや寅ちゃん達の想いを継ぎ、家庭裁判所の事案に限らずどんな案件でも、少しでも愛のある、幸せになれる解決ができるといいなと思います。

「早く専門家に頼めばよかった」という話

財前法律事務所の弁護士の財前です。今回は、私が経験した、こんなこともあるのだなという話をします。少し前のことです。昔の傷跡の皮膚がグスグスになり、痛くなってしまいました。お医者様に診てもらう程でもないと思い、市販の強めの薬を塗って対処していました。しかし、いくら塗り続けても良くなりません。むしろ腫れ上がって悪化している気すらします。我慢できない程ではないのですが、毎日痛くて、小さいけれど強いストレスになっていました。数か月後、これくらいで病院に行くのも何か気が引けるな・・・と思いつつ、我慢できず、思い切って皮膚科を受診しました。一通り診察していただき、薬も処方していただき、問診票に私が何気なく書いた「○○という薬を塗っているが良くならない」という記載を見て、先生が一言。「○○系はダメですよ。かえって悪くなります。」・・・・・・・・・・・・えっ!?その○○系というのは強い薬として市販されているものなのですが、今回の私の症状ではかえって悪化するのだそうです。強い薬を塗り続けているのに「悪化している気すらする」じゃなくて、本当に悪化させていたのでした。先生に処方された薬を塗るようになったところ、みるみる症状は落ちついていきました。こんなことなら、さっさと皮ふ科を受診すべきだった・・・普段、私は、自分が関わる法律の分野に関しては、色々な人に事あるごとに「早く適切な専門家に相談して。その方が解決が早い。」と言い続けています。「弁護士に頼む程じゃないから」とか「弁護士に頼むとややこしくなる」という思い込みで他のところへ相談へ行き、かえって長引いてしまったという事例に接することもあります。しかし、そんな自分が、皮膚の傷に関しては、専門家へ相談せず素人知識で誤った対処をし続けた結果、どんどん悪化させていたのでした。何事も、早く専門家に依頼すべきだな、という話でした。

弁護士費用特約 対応します

弁護士費用特約とは弁護士費用特約(弁護士特約)とは、保険の特約で、自動車事故などで被害者になった場合に弁護士費用を補償する特約です。自動車保険の特約として付けている方もいらっしゃると思います。自動車事故だけではなく、日常生活の事故もカバーしている場合もあります。いざというときに弁護士費用を気にせず弁護士に交渉を依頼できますので、付けておいて損はない特約だと、私は思っています。弁護士の選び方・探し方弁護士費用特約を利用する場合、どの弁護士を選任するかは保険会社にお任せという方も多いと思います。しかし、愛知県の場合で言うと、保険会社がLAC(日弁連リーガルアクセスセンター)を通じて弁護士の選任依頼をかける場合、「名古屋地区」「西三河地区」という指定はできるようですが、例えば「安城市」「刈谷市」といった指定はできません。指定された地域で名簿に登載されている弁護士から順次担当が割り振られますので、遠方の事務所の弁護士が担当になる場合もあります。割り振られた事務所でなく他の所にしたいと保険会社に言うと、「では自分で探してください。」と言われてしまうようです。また、弁護士の選任を保険会社に任せた場合、自分でどの弁護士にするか選ぶことはできないため、場合によっては担当弁護士と相性が合わないということもあるかもしれません。このような事態を避けるためには、お近くの弁護士や、ホームページなどを見て良さそうだと思った弁護士の事務所に、「弁護士費用特約を使って相談したい」と予約するのがよいと思います。保険会社の了承があれば、費用は保険会社持ちで、かつ、ご自分に合う弁護士に依頼して交渉を進めることができます。※ 当事務所でも、弁護士費用特約のご利用が可能です。お気軽にお問い合わせください。

成年年齢引下げ ~若者の契約トラブルに注意!~

2022年4月1日、成年年齢が18歳に引き下げられました。成年年齢が引き下げられることは直前まであまり報道などがされていなかったので、このままで大丈夫かな…と個人的には心配していました。ですが、3月末から急に、報道などでもこのニュースを目にするようになり、よくご存じの方も多いと思います。今までは20歳未満の人であれば未成年者取消権を使うことができましたが、4月からは18歳、19歳の人も、未成年者であることを理由に契約を取り消すことができなくなってしまいました。私が力を入れている分野の一つが、消費者被害です。近年、「SNSで知り合った人にもうけ話があると勧められ、お金を渡してしまったが返ってこない」と言った相談が多くなっています。すぐに払えるお金がないと断ると、消費者金融で借金をするよう言われたり、ローンを組まされることもあるようです。この類の被害は、相手方のアカウントしか知らず住所氏名が分からなかったり、判明しても相手方にお金がなかったりで、被害回復ができないケースが多くあります。18歳というと、高校を卒業して大学に入ったり社会に出たりする人が多い年齢です。色々な人と出会って、新たな人間関係を広げたいと思う人も多いでしょう。コロナ禍でアルバイトがなかったり、先行きが不安だったりで、少しでもお金を増やしたいという気持ちも非常によく分かります。ですが、うっかり契約をしてしまっても、未成年者であることを理由には取り消せません。その話は本当に信じてよいのか。その人は本当に信じてよいのか。すぐに契約せずによく考えて、少しでも何かがひっかかったらその場で契約せず、持ち帰って周りの人に相談してみてください。

なぜ無料相談をやらないの?(続編)

以前、なぜ無料相談をやらないのかという話を書きました。弁護士が行う無料の法律相談には、2種類あります。① 相談者は無料だが、弁護士には有償② 相談者も無料、弁護士も無償①の例としては、自治体が市民向けに行う無料相談や、法テラスの法律相談、保険の弁護士特約を使った相談などがあります。これらは相談者の金銭的負担はありませんが、弁護士にはそれぞれ、自治体や法テラス、保険会社から報酬が支払われます。ですから、弁護士にとっては、対価をいただいて行う有償の相談であり、「無料」ではないのです。これに対し、法律事務所が行っている無料相談は、②の「弁護士も無償」のケースが多いように思います。一口に無料相談と言っても、よくよく中身を見ると、「借金の相談は無料」「交通事故の被害者は無料」など、分野を限っている場合もあります。また、「初回無料」「○分まで無料」というケースもあります。弁護士は、裁判官や検察官とは異なり、自営業者です。自分の知識や技術や時間を提供し、代わりに対価をいただいて生計を立てています。自身の弁護士会費も支払わなければなりませんし、事務所を維持するためには色々な経費もかかります。そんな弁護士が「無料」で何かをやるということは、弁護士側にも何らかのメリットがあるのが通常です。もっとも、弁護団事件のように社会正義のために手弁当でやっているケースもあります(これは私もやっています)。しかし、法律事務所がサービスとして恒常的に掲げている「相談無料」でこのようなケースはほぼないでしょう。では、弁護士が無料でも法律相談を受けたいと思う理由は何か。それは、受任件数を増やすためだと思います。集客ツールとしての無料相談で間口を広げ、その中から受任に繋がりそうな案件を拾うのです。もちろん、そのような経営方針もアリだとは思います。例えば弁護士も事務員も多数在籍する大きな事務所や、受任に繋がらない相談を早々に見限られる弁護士であれば、無料相談で間口を広げる方法も有用でしょう。しかし、弊所は小さな事務所ですので、大規模事務所のような人的リソースはありません。また、私の性格上、無料だからと言って、委任に繋がらない相談をそこそこのアドバイスで終えるということはできません。そのような理由で、弊所では今のところ、無料相談は実施しておりません。昨今は、相談は有料だと言うと、「無料じゃないの?」と言われることもあります。無料相談は時の流れなのかと、正直、心が揺らぐときもあります。しかし、私としては、プロの仕事には正当な対価をきちんと支払う、そんな国であってほしいという思いもあります。そんなこんなで、今しばらくは相談は有料とさせていただこうと思っています。※ もちろん、当事務所でも、弁護士特約を利用した相談、法テラスの相談は無料です。