なぜ無料相談をやらないの?(続編)

以前、なぜ無料相談をやらないのかという話を書きました。


弁護士が行う無料の法律相談には、2種類あります。

① 相談者は無料だが、弁護士には有償

② 相談者も無料、弁護士も無償


①の例としては、自治体が市民向けに行う無料相談や、法テラスの法律相談、保険の弁護士特約を使った相談などがあります。

これらは相談者の金銭的負担はありませんが、弁護士にはそれぞれ、自治体や法テラス、保険会社から報酬が支払われます。

ですから、弁護士にとっては、対価をいただいて行う有償の相談であり、「無料」ではないのです。


これに対し、法律事務所が行っている無料相談は、②の「弁護士も無償」のケースが多いように思います。

一口に無料相談と言っても、よくよく中身を見ると、「借金の相談は無料」「交通事故の被害者は無料」など、分野を限っている場合もあります。また、「初回無料」「○分まで無料」というケースもあります。


弁護士は、裁判官や検察官とは異なり、自営業者です。

自分の知識や技術や時間を提供し、代わりに対価をいただいて生計を立てています。

自身の弁護士会費も支払わなければなりませんし、事務所を維持するためには色々な経費もかかります。

そんな弁護士が「無料」で何かをやるということは、弁護士側にも何らかのメリットがあるのが通常です。


もっとも、弁護団事件のように社会正義のために手弁当でやっているケースもあります(これは私もやっています)。

しかし、法律事務所がサービスとして恒常的に掲げている「相談無料」でこのようなケースはほぼないでしょう。


では、弁護士が無料でも法律相談を受けたいと思う理由は何か。

それは、受任件数を増やすためだと思います。

集客ツールとしての無料相談で間口を広げ、その中から受任に繋がりそうな案件を拾うのです。


もちろん、そのような経営方針もアリだとは思います。

例えば弁護士も事務員も多数在籍する大きな事務所や、受任に繋がらない相談を早々に見限られる弁護士であれば、無料相談で間口を広げる方法も有用でしょう。


しかし、弊所は小さな事務所ですので、大規模事務所のような人的リソースはありません。

また、私の性格上、無料だからと言って、委任に繋がらない相談をそこそこのアドバイスで終えるということはできません。


そのような理由で、弊所では今のところ、無料相談は実施しておりません。


昨今は、相談は有料だと言うと、「無料じゃないの?」と言われることもあります。

無料相談は時の流れなのかと、正直、心が揺らぐときもあります。


しかし、私としては、プロの仕事には正当な対価をきちんと支払う、そんな国であってほしいという思いもあります。


そんなこんなで、今しばらくは相談は有料とさせていただこうと思っています。



※ もちろん、当事務所でも、弁護士特約を利用した相談、法テラスの相談は無料です。




財前法律事務所

愛知県・安城市の弁護士です。
「街弁(マチベン)」として、普通の市民の皆様が遭遇してしまう法律問題に取り組んでいます。
存在は身近、仕事は高品質がモットーです。