ロマンス詐欺や投資詐欺、副業詐欺、情報商材詐欺など、SNSを通じた詐欺が横行しているのは皆様ご存じだと思います。これらは、残念ながら、相手方を特定するのが難しく、仮に特定できてもお金を隠されるなどして被害回復が難しい分野の一つです。
ところが、今度は「被害回復」をうたった弁護士による二次被害ともいうべき着手金トラブルが問題になっています。2025年5月14日放送のNHK・クローズアップ現代では、SNS型投資詐欺の被害に遭った方々が、弁護士に高額な着手金(*)を支払ったにもかかわらず、「連絡が取れない」「何の進展もない」という深刻な二次被害にさらされている実態が紹介されました。
そして、番組では、そのような「着手金ビジネス」の裏には、弁護士への信用を利用して多額の利益を得ようとする広告会社の存在が明らかにされました。
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こうしたビジネスは、弁護士という職業そのものの信頼を深く傷つけるものです。
弁護士への信頼を失墜させる許しがたい行為
実は、国際ロマンス詐欺の回復を謳う弁護士がどうも怪しいという話は、数年前から消費者弁護士界隈で挙がっていました。膨大な件数を扱っているのに弁護士が少数しかいない、違う弁護士のホームページなのに同じ作りをしている…。どうも裏で何かの業者が手を引いているのではないか。しかし、なかなか確証を取ることができず、実態解明までに時間がかかってしまいました。
この間、私は、「こういう弁護士がいるが依頼してもよいか」とのご相談には、怪しいからやめた方がよいとアドバイスしてきました。しかし、私たちが手をこまねいている間に被害が広がってしまったかと思うと、とても悔しく、申し訳ない気持ちで一杯です。
私は、弁護士が提供する「商品」の一つは信頼だと思っています。社会で弁護士資格に何か力があるとすれ、それは、法的知識や技術はもちろん、一人一人の弁護士が目の前の案件に真摯に、誠実に向き合って積み重ねた信頼の賜物だと思います。
信頼は、築くのには時間がかかりますが、崩れるのは一瞬です。ごく少数の者による弁護士資格に対する信頼を裏切る行為は、全ての弁護士に対する不信感を生んでしまいます。
日々、私たちはこつこつと真面目に仕事をしているのに、なんてことしてくれるんだというのが正直なところです(あくまでも私個人の感想です)。
債務整理分野でも、同様の“誤認商法”がまかり通っている
この問題は、SNSによる詐欺に限った話ではありません。
債務整理分野においても、不適切な広告が問題となっています。
たとえば――
- 「着手金0円」と謳いながら、実際には「管理料」「手数料」などの名目で報酬を徴収する
- 「全国対応」としながら、出張体制や弁護士関与の実態が乏しい
- 「借金減額シミュレーター」や「借金0円の可能性」と表示し、どんな入力でも良い結果が出る仕組みで誘導する
- 「国が認めた借金救済制度」など、あたかも特別な優遇制度があるかのように誤認させる表現を用いる
これらは、日本弁護士連合会の業務広告指針に反し、誤認・誇大広告に該当するおそれがあります(参考:https://niben.jp/news/ippan/2025/202503104437.html)。
私の経験では、当初から破産やむなしという方について、大手事務所が任意整理で受任して実現不可能な和解案を締結し、結局支払えなくなって地元の弊所へ破産のご依頼にいらっしゃったという案件が複数ありました。
もちろん、ご本人の強い意向で任意整理を選択したという場合もありましょうが、結局、当初から破産申立をご依頼された場合と比べ、任意整理分の弁護士費用が余計にかかってしまうことになります。
「会えずの弁護士」問題――信頼できる弁護士の選び方
よく、「どうやってよい弁護士を選んでよいか分からない」との声を耳にします。また、「○○に強い弁護士を探している」というご質問もいただきます。
法的トラブルの解決において、誰に頼むかは大切な問題です。ネット上の広告文句や派手なホームページ、見せかけの費用の安さだけで選ぶのは、非常に危険です。
そもそも「○○に強い」というのは、専門性の客観性が担保されない場合、弁護士の広告規制上使ってはならない表現とされています。
弁護士の能力というのは、その分野の専門知識や取扱い件数だけでは測れません。依頼者からヒアリングする能力、事実から法的構成をする能力、裁判所や相手方へ分かりやすい伝わる文章を書く能力、依頼者への共感力と感情に流されず判断するプロ意識、その方との相性などなど、たくさんの評価軸があると思います。
- 「本当にその弁護士と会えるのか?」
- 「誰が自分の事件を担当するのか分かるのか?」
- 「事務的な処理だけで終わってしまわないか?」
こうした不安を抱かないためには、必要なときにリアルで会える、顔の見える弁護士に依頼すべきです。
迷ったら、地元の信頼できる弁護士へ
大切なお金や生活がかかった法的トラブル。
安易な「回復ビジネス」や「無料・全国対応」の甘言に惑わされることなく、誠実に対応する地元の弁護士にご相談ください。
顔が見える、必要があるときはリアルに会える弁護士こそが、信頼でき確実なパートナーだと、私は思います。
(*参考)NHK記事の補足説明
記事では、8%という着手金の設定自体が高額だというようにも読めます。しかし、経済的利益(≒被害額)300万円以下の場合は、旧日弁連基準でも着手金は8%とされています。
8%というパーセンテージが問題ではなく、被害額の大小にかかわらず一律8%としている点が問題だと考えます。
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